交わらない平行線。


触れることのできない2本の線。


曲げられない2人の想い。






























■ Lines Contact ■






























「殺せば?」

血のニオイが鼻をつく。
まわりには大量の血を流した仲間たちが倒れていて。
あたしのカラダからも同じものが流れ出ていた。

「殺せばいいでしょ」

―――もう一度。同じコトバを吐く。
今まで古代の言葉を紡ぎ出していたその口をもう開いてはいない、金髪の魔導師。
ただじっと、冷たいアイスブルーの瞳であたしを見下ろしているだけ。

「できないんだ?」

ピクリと彼の指が反応し、次の瞬間にはあたしの体を炎で包ませていた。

「・・・ッくあ・・・・・!」

「お前1人殺すことくらい、私にはそう手間になることでもない」

ゼイ、と肩で1つ息をするとムリヤリ笑ってみせる。
・・・・・そろそろ、ゲンカイ。

「じゃあ、なんで殺さないわけ?」

彼はふ、と冷たい笑みをこぼす。

「生かしておいたほうがこの先楽しめそうだろう?それに・・・私が手を加えなくとも全員死ぬ」

「まあね、結構危険かも。でもまだ回復アイテム持ってるし、あたししぶといわよ?」

カツ、と音を立てて彼が一歩前に出る。
なんて哀しい瞳。

「・・・本当は、もっと早く殺す予定だったんだ。―――俺は、できなかった」

言葉づかいが変わる。
―――――あたしが好きなった人の。
体にチカラが入らない。
めまいがする。

「紅蓮の魔導師・・・・・」

聞きなれた彼の通り名を呟く。
突然目の前が深紅に染まり、暖かいぬくもりがあたしを包んだ。
彼の少しはね気味の金髪に顔を寄せると、甘い香りが鼻をくすぐる。

「俺に、お前を殺せるわけないだろう・・・・・?」

ぎゅ、とあたしを抱きしめる腕に力がこもる。
耳元で聞こえる柔らかなテノール。
―――なんだか、泣けてきた。
昔と変わらない。
あたしを抱く細い腕も。
深い湖の色をした瞳も。
―――――哀しい光をたたえているけれど。
切ないくらいに優しい、彼の香り。
今は、さびた鉄のニオイがそれをかき消そうとしている。




































平行線は、曲がった。









それが、ほんの一瞬のことだとしても。




































彼の腕の力が弱くなり、やがてぬくもりが消えた。
トン、と軽く突き放すような感覚を肩におぼえる。
彼の瞳には、蒼い炎が宿っていた。

「・・・今日のところは引き返す。手ごたえが無さすぎて戦う気も失せた」




































呆れるくらいに堅い、意志の平行線。









曲がる前に折れてしまいそうな。




































「あたしは諦めないわよ」

彼があたしの言葉の意味を理解したのかどうか。
瞳に宿る蒼い炎が静かにゆらめいた。

「・・・・・私は、死ぬまで竜帝様のしもべだ」

さっと立ち上がり、紅いマントを軽くはたいて後ろを向く。 昔から、追いかけつづけた背中。
空間移動の魔法を唱えはじめた彼が突然詠唱をやめて、顔をあたしに向ける。
かすかに微笑んでいた。
あたしの、涙でかすむ2つのガラス玉がしっかりみすえていたならば。

「・・・・・俺は、死んでもアンジェラが好きだよ」

「・・・・・・・ッ!!」
立ち上がろうと全身に力を込めると、雷に貫かれたかのような激痛が走る。
だけど、今はそれどころじゃない。
―――――もうすぐ詠唱が終わる・・・・・!
あたしが彼に飛びつくのと彼の詠唱が終わるのは、ほぼ同時。
一瞬だけ、体と額に彼の空気を感じた。
行き場の無いあたしのカラダは宙に浮いて、固い地面に叩きつけられる。



























あたしがあなたを救ってあげる。



曲がらない線を曲げてみせる。



そしたら2人は触れ合える?







































体にチカラが入らない。
めまいがする。



「      」



聞きなれない彼の本名を呟く。



ふわりと、甘い残り香が紅い風に舞った。






************************
切ない話を書くのにうってつけのお二人。
・・・・・この話はそんな切なくなりきれてませんけど(涙)
ドラゴンズホールで戦う少し前に一回戦っていた、という設定で。
竜帝への忠誠心とアンジェラへの想い。
聖剣の勇者としての責任感と紅蓮の魔導師への想い。
そんな2人の平行線なお話でした。(意味不明/汗)



朝凪氷菜さんから頂きましたぐれあん小説でございます☆
何とも切なくて、まさしくぐれあんな感じの小説!!
朝凪さん、ありがとうございました★